2014年08月11日

妖精チャックと星の舟A

チャックのすぐそばに舞い降りてきたその星は、
形こそ三日月のようですが、月と呼ぶには小さく、太陽の欠片というには大きくて、
鈍色に、うっすらと、息をするように輝いています。

チャックは目を真ん丸にしてそれを見つめていました。

するとそこから、ふぁーあ、と大きなあくびが聞こえてきたのです。

「誰かいるの?」チャックはワクワクしながら声をかけました。
すると、三日月の中から、ひょっこりと男の子が顔を出しました。
銀色のくるくるとした髪、金色の瞳をした、星のような男の子です。

「誰だい、きみ?」
チャックは三日月に近づいて話かけました。すると男の子は、鈴の音のような声で、
「ぼくはキラ。星のこどものキラ」と、答えました。「きみは?」
「ボクはチャック。ねぇキラ、きみ、あの星空からやってきたのかい?」

チャックが指差す星空を、キラは少しの間見上げると、突然大きな声で、
「しまった!居眠りしてる間に、ずいぶん遠くに流されてしまったんだ」
「居眠り?居眠りってどういうこと?」
「こうしちゃいられないや。ねえきみ、チャック、どこかあの星に届くようなところはないかしら?」
キラは慌ててそう言いました。
「ボクはあの星空に帰らなきゃいけないんだ」
チャックは考えます。
「星に届くところなんてあったかな?……そうだ。ねぇキラ、ボクの友達に、大きな羽の夜明け鳥がいるんだ。そいつに頼んで、星の近くまで運んでもらうっていうのはどうだろう?」
キラは答えます。
「夜明け鳥!そいつはいい考えだけど…夜明け鳥は太陽の道案内をする夜明けの鳥だ。夜が明けてからじゃ遅いんだよ…」
キラは途方にくれたように、星空を見上げます。

「もしかしたら」
チャックはふと思い出してつぶやきました。「フィボナッチ草なら星に届くかもしれない」
それを聞いたキラは嬉しそうに振り返りました。
「本当かい?その草はどこに?」

チャックは草原の向こうを指差します。
「あの丘のむこうに生えてるんだ。ぐるぐるぐるぐる、空に向かって」
キラはチャックに礼を言うと、自分が乗っていたその小さな三日月を抱えて歩きだしました。

「どうするんだい、キラ?」
「決まってるだろう、星空に戻るんだよ」

そんなことを聞いて、チャックがおとなしくしていられるはずがありません。

「キラ、ボクもついて行っていいかい?道案内してあげるよ」

そうしてチャックは、キラと一緒にフィボナッチ草を目指して歩き出しました。

(Bに続く)
posted by 中神謙一 at 04:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 妖精チャックと星の舟
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/102281431
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック