2014年08月16日

妖精チャックと星の舟B

フィボナッチ草を目指して、チャックと星のこども、キラは歩いていきます。
三日月の先端をチャックが、後ろをキラ。
二人で抱えて歩きます。

と言っても、三日月はちっとも重たくなんかありません。
それどころか、抱えているチャックの体も少しふわふわとして、
慣れるまで上手に歩けないくらいでした。

「この三日月はなんなんだい?」
チャックはキラに尋ねます。「何だかボクもふわふわする」
キラは答えます。
「これは三日月じゃないよ、チャック。これは星の舟さ。ボクたち星のこどもは、この星の舟にのって、あの空に輝く星座を形作るのが仕事なんだ」
「じゃあ、キラはこの舟にのって、夜空に?」
「そうとも」
「夜明け鳥やリップみたいな羽もないのに?」
「そうとも」
「そいつはすごいや!」
チャックは驚きました。そしてますます楽しみになりました。

そんなことを話しているうちに、二人はフィボナッチ草のところまでやってきました。
「こいつはすごいや!」ぐるぐると空にむかって伸びているフィボナッチ草を見上げて、今度はキラが驚きました。

二人の前に立つフィボナッチ草は、茎というより太い幹を持った木のようで、そこに螺旋階段のような葉っぱがにょきっと突き出しています。見上げてみても、そのてっぺんは葉に遮られ、下からではどれほどの高さがあるかわかりません。

「このフィボナッチ草は、ゆっくりゆっくり螺旋のように空に向かって伸びていくんだって」
「へえ」
「この葉っぱを登っていけば、一番下の星くらいまで届くかもしれない」

二人は星の舟を抱えてフィボナッチ草を登り始めました。
1、1、2、3、5、8、13、21、34…。最初の内こそ葉っぱはまばらで、
ジャンプして次の葉っぱへ移動していましたが、
次第に葉っぱの間隔は狭くなり、
ついには重なり合った葉っぱはちょっとした滑り台のような一つながりのものになり、
まるで空に向かって伸びていく道のようになりました。

随分登ってきましたが、星の舟を抱えて体がふわふわするせいでしょうか、
チャックはちっとも疲れることもありません。
それどころか、楽しくて楽しくて仕方ないのです。

夜の底、さっきまでチャックがいた大地は黒々と、
そしてその少し上の夜空から、今いるところの空までが、
少しずつ少しずつ深い青にグラデーションを描いているのがわかります。

―夜ってこんな色だったんだ。

チャックは初めて見る色にわくわくしてきました。
そうやってさらに登りつづけると、とうとうフィボナッチ草のてっぺんに辿りついたのです。

(Cにつづく)
posted by 中神謙一 at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 妖精チャックと星の舟
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