2014年08月17日

妖精チャックと星の舟C

「ついたーっ!」

チャックとキラは同時に声をあげました。
フィボナッチ草のてっぺんは、まるで小さな円卓のよう。
そこでは新しいはっぱが少しずつ生まれているところです。

見回せばぐるりと辺り一面を星が囲んで、
確かに手を伸ばせば届きそうなほど近くに星が輝いています。

円卓のようになっている葉っぱのふちに立ち、キラはあたりを見回します。
チャックは心配そうにそれを眺めます。

「どうだい、キラ。届きそうかい?」

キラは人差し指をぺろりと舐め、何やら風向きを調べていると、
チャックに向かってにっこりと笑いかけました。

「ありがとう、チャック!ここからなら、どうにかなりそうだ」

チャックはほっとしました。

「ほら、あそこに小さな星があるだろう?」

確かに今チャックたちが立つ場所から少し見下ろす夜空に、
小さな星が光っています。

「すこし薄いけど、ここならもう空流に乗れると思う」
「なんだい、それ?」
「海の中に海流があるように、夜空には、幾層にも濃さの違う空流があるんだよ。その波の濃さに合わせて、そこに浮かぶ星があるんだ。この星の舟でその波に乗るから、ボクたちは羽がなくたって夜空を自由に行き来できるのさ」
「へえ!」
「もっとも、大地に近づけば近づくほど波は薄く、浮力は小さくなっていくから、小さな星しか浮かべない。だからここまで登ってこないと、星の舟でも夜空に戻れやしないんだけどね」

キラはそういいながら、舟に乗り込む準備を始めました。

「ねえキラ、ボクもその星の舟に乗せてくれないかい?」
「え?」
「ボクも星空をその舟で渡ってみたいんだ」

キラは少し考えて、
「本当は、星のこどもしか乗っちゃいけない舟なんだ。絶対内緒にできるかい?」
「約束するよ!」
「ようし、合図したら飛び乗って!」
「うん!」
キラとチャックは星の舟を抱えます。
「今だ!」
波のタイミングを計り、キラの合図でフィボナッチ草のてっぺんから飛び出します。
ざぶん。
そんな音を聞いたような気がしました。
そうして二人が乗り込んだ星の舟は、星空に漕ぎ出したのです。

(Dにつづく)

posted by 中神謙一 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 妖精チャックと星の舟
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/102420649
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック