2014年08月23日

妖精チャックと星の舟F

チャックは新しく星座の一角で光りだしたその星を見つめました。
初めて星座が形作られるところを見たのです。ドキドキとワクワクが止まりません。

「気に入ったかい、チャック?」
「うん!」

よし!とキラは掛け声をかけると、星の舟を、より深い夜空に向かって漕いで行きます。
所々でキラは星の位置をそっと優しく直してやるのです。
チャックは瞬きするのも忘れて星の輝きを見つめています。

「このすべてが、太陽の欠片なの?」
「ううん、これはもう、星だよ」とキラが答えます。
「でも、星っていうのは、一日の終わりに太陽が砕けて、その小さく飛び散った欠片なんだろう?」

だってチャックは友達のリップにそう聞いたんです。

「それはもちろん嘘じゃないよ、チャック。でもそれは、その世界の理で、この世界では少し違うんだ。最初は太陽の欠片でも、時間がたてば一つ一つが星になるんだ。ここはもう、星の世界なんだ」
「星の世界だって?ここはファンタピアじゃないのかい?」

チャックは驚きました。
だってチャックはずっと、自分はファンタピアという世界にいると思っていたんですから。
星の世界なんて初めて聞いた言葉です。

「もちろんここはファンタピアだよ。でもねチャック」と、キラは悪戯っ子のように微笑みながら「世界っていうのは、幾つもいくつもあるんだよ」
「いくつもだって?」
「そう、いくつもさ。海には海の世界があるし、夜空の上には星の世界がある。チャックが暮らすあの草原にも、草原の世界があるだろう?ボクは行ったことはないけれど、きっとあの大地の下には、また別の世界があるはずさ」

チャックは考えます。― 世界?世界だって?そんなにたくさん世界。世界ってなんなんだろう?

「世界は、いくつもの世界でできているんだ」

まるで謎々のようだ。そうチャックは思いました。

「キラ、それじゃあボクとキミは、違う世界の住人だってこと?」
「そうだよ、チャック。たくさんの世界がパイ生地のように幾層にも重なって、大きな世界が出来ていて、そこに暮らすたくさんの生き物は、それぞれがまた違う世界を抱えていて、それぞれが違う世界に住んでいるんだよ」

なんだか途方もないお話で、チャックの頭はこんがらがってきたのです。
一人ひとりが違う世界をもっていて、その世界に住んでいる?
じゃあボクは幾層もある広い世界にたった一人で生きているってことなんだろうか。
それじゃあボクは、どこで誰と一緒にいても、ひとりぼっちってことじゃないか。
チャックはなんだか寂しくて悲しくなって来てしまったのです。

そんなチャックを乗せたまま、星の舟は夜空を進んでいきます。

(Gにつづく)

posted by 中神謙一 at 00:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 妖精チャックと星の舟
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/102554150
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック