2014年12月27日

妖精チャックとクリスマスプディング その9

生まれたての太陽は、ファンタピアの地平の彼方へと沈んで、辺りは夜に包まれました。
草原の所々には、オレンジ色の淡い光が灯っています。
それはランタン草の放つ灯りです。
そのランタン草の一つに、チャックは住んでいるのです。

「どうだい、チャック?」
マーチが、ドアの窓から外を眺めているチャックに尋ねます。
「まだみたいだよ、マーチ」
もう、何度この会話を繰り返したことでしょう。チャックもマーチも、魔女がやってくるのを今か今かと待っています。けれどやってくるのはクリスマスパーティのお客ばかり。もうすぐパーティが始まる時間です。

コンコン。

ノックの音がしました。
大急ぎでチャックが扉を開けると、そこには海ガエルのクロックが立っていました。

「何だ、クロックさんか!」
「何だとはなんだい」
「ああ、ごめんごめん」とチャック。「みんなもう来てるよ」
クロックはお土産に持ってきた海イチゴをテーブルに置くと、先に来ていた友達の元へと歩いて行きます。
テーブルの上は、皆が持ち寄ったお菓子やフルーツが山積みです。けれど、肝心要のクリスマスプディングがまだ届いていないのです。
マーチがチャックに耳打ちします。
「チャック、皆揃ったけど、どうする?」
「うん……」
テーブルで山葡萄のジュースを飲む皆の声が聞こえました。

「魔女のクリスマスプディングだって?」法螺貝のロビンの声です。
「そう!洞窟の魔女に作って貰ったんだって。」とハーピのリップが答えます。「だって、その為に、あたし大急ぎで星の粉砂糖を集めたんだもの。星の粉砂糖は、1日の終わりに太陽が砕けて散った欠片の、そのまた小さな小さな星屑だから、ファンタピアの裏側を、行ったり来たり、大変だったの」
「それならボクらだってそうだよ。ねえ?」
そう言ったのはヒトデのステラ。それに答えるのはナマコのテクテクです。
「大変だったのよ、いきなり水干し柿が欲しいって言うんだもの。ご存知の通り、水干し柿は海水と淡水の丁度いいバランスで混ざる場所でしか出来ないから、夜の海のあちこち探したのよ」
真珠の王様や女王様、夜明け鳥のグーグやズーズー、その他、眠り鼠やヤマアラシのスパイク、笑い猫のニタニタも、とにかく材料探しに協力してくれた者は皆。如何にその材料集めが大変だったかを語ります。そしてそれを聞いた者は、そんな材料で作られたクリスマスプディングが、どれほど美味しいんだろうと期待を膨らませるのでした。

皆があまりに楽しみにしているのを見ると、さすがのチャックも少し不安になって来ました。もし間に合わなかったらどうしよう。そう不安になって来たのです。
チャックは考えます。 もしかしたら、やっぱり間に合わなかったのかもしれない。何カ月もかけて熟成させるクリスマスプディングを、今日作ってくれなんて、いくら相手が魔女だって無理難題すぎたかもしれない。
チャックは皆にそれを伝えようと決めました。
「皆、来てくれてありがとう!皆に言っておかないといけないことがあるんだ。」
チャックは皆に声をかけたのです。

(その10につづく)

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