2015年10月28日

妖精チャックとお化けカボチャ 3

カボチャのジャックを抱えて、チャックは川沿いを歩きます。
ポロロン、ポロロン。
遠くで竪琴鳥の鳴き声が聞こえてきます。
チャックは尋ねました。

「ねぇジャック。どうして川を流れていたんだい?」

するとジャックは少し恥ずかしそうに答えました。

「うっかりさ。川を覗き込んでいるうちに、うっかり落っこちちまったんだ」
「うっかり?」

オレンジのカボチャが、ちょっぴり赤くなりました。

「ああ、俺様は鏡の代わりにしようと思っただけなんだ」
「鏡?」
「そう。新しいネクタイが歪んでいないか、鏡代わりにちょいと川面を覗き込んだだけなんだ。ただ、ちょっと覗き込みすぎたのがいけなかった。あ!っと思ったときには俺様の頭はごろん、ぼちゃん!だ。もちろんすぐに拾おうとしたんだが、何と言っても体には目がついてねえからなぁ」
「身体って…ジャックの体は、置いてきぼりになってるってこと?」
「そうなるな。きっと今頃、必死になって頭を探してるだろうさ」

チャックには、ジャックの言っている意味がまるでわかりません。
だってそんなの、まるでお化けみたいじゃありませんか。
チャックがそんなことを考えながら歩いていくと、右からの川の流れと、左からの川の流れ、二つが注ぎ込むところに辿りつきました。

「ジャック、君が流れてきたのはどっちの川だい?」
「そんなことわかるもんか!俺様は水の中でぐるぐる回ってたんだぞ?」
「でも、それじゃあどっちに行ったらいいかわからないよ」

見れば右と左、それぞれの川は、そこからどんどん離れていくようです。

「あ、あれ!あの青いのはなんだ?あれは流れてる時に見た覚えがあるぞ」
「あれは海色草だよ。じゃあ、ジャックはあっちから流れてきたんだね」
「海色?」
「よし、行こう!」

チャックは右の川沿いに生えている海色の草原を目指して歩きだします。
海色草は絹のように柔らかく、うっすらと透明な葉っぱです。
それが集まって太陽の光にあたると、海のように青かったり深い緑だったり、夕暮れにはオレンジ色に染まって見える不思議な葉っぱなのです。

「ほら、ごらんよジャック。」

海色草の草原にそっと入ると、柔らかな葉っぱはふわふわと倒れ、その隣の葉っぱを揺らし、そのまた隣の葉っぱを揺らし…そうやって、まるで波紋のように一面が揺れていきます。
その揺れた葉っぱはまたしなやかに起き上がって、本当に海の浅瀬を歩いているような気分になるのです。

「へぇ!こいつは面白いな!」

チャックとジャックは、海色の草原に波紋を起こしながら進んでいきます。
じゃぶじゃぶという音の代わりに、さやさやという音を立てながら。

「おい!あれだ!」

突然ジャックが叫びました。

「なんだい、大声で」
「あれだよ!ほら!見ろ!」

ジャックは興奮した声で叫びます。

「あれ、あれが俺様の体だ!」

ジャックに言われるままそちらを見ると、遠く、川辺の岩の上に、首なしの体が座り込んでいるのでした。



つづく
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