2015年10月29日

妖精チャックとお化けカボチャ 4

「これがジャックの体なの?」

おっかなびっくりしながらチャックは言いました。
マントを羽織り、白いシャツに真っ赤な蝶ネクタイ、黒いズボンをはいてはいますが、それはどう見ても藁で出来た大きな人形なのです。それがペタンと座り込んでいるのです。
何より、その体には首から上が無いのですから、チャックじゃなくても気味が悪いに違いありません。

「そうとも。そいつが俺様の体だ。おい!おいったら!」

ジャックが声をかけると、藁人形――ジャックの体はきょろきょろとあたりを見回します。耳もないのに、ジャックの声は聞こえるのでしょうか。それでもやはり、目がないせいなのか、中々ジャックの方にはやってきません。

「しょうがないな。おいチャック、そうびくびくしないで、俺様をあの体の上にのっけてくれ」
「ええ?」

チャックはおどおどとジャックの頭を体の上に戻そうとしますが、体の方はそわそわ、そわそわ落ち着きません。

「えい!ちょっと!動くなよジャック!」
「おい!今だ!ほら、乗っけろって!」

ばたばた、ばたばた。
ようやく上手く乗せることが出来ると、そわそわしていた藁の体はぴたりと止まり、しゃんとしました。
ぐいっと動いた藁人形の手が、頭に手を添えると力強く回転させました。びっくりしたチャックが眺めていると、カボチャがぴたりと止まりました。

「ふう!これで座りが良くなった!ありがとうよ、チャック!」ジャックは藁人形の体をポキポキ、首をぐるぐるしながら言いました。「やっぱり自分の手足があるってのはいいもんだな!……それにしても、随分流されちまったもんだ。急いで戻らなきゃ、今夜のパーティに間に合わなくなっちまう」
「パーティ?」
「ああ、今夜は年に一度のパーティだからな」
「ねえ、それって楽しい?」
「楽しくなければそれはパーティなんかじゃない」
「ボクも連れてってくれないかい?」

もちろんチャックはそういいました。
だってチャックはいつも面白いことがないかとさがしているのです。

「おまえが?俺たちのパーティに?」

ジャックはしばらく思案していましたが、ズボンのポケットからごそごそと大きな紙袋を取り出すと、その紙袋に穴をあけ始めました。
チャックが何をしているんだろうと眺めていると、ジャックはその紙袋をチャックの頭にかぶせました。

「うわっ」
「これでよし!ほら、チャック、目を開けてみろ」

チャックが目を開けると、ジャックが明けた穴は、ちょうどチャックの目と口の位置でした。ジャックが尋ねます。「どうだ?どんなのが見える?」
そう言われて、チャックはようやく気が付きました。
その紙袋の中から見えるのは、いつもチャックが暮らすファンタピアの青空や草原の景色ではありませんでした。

「ジャック!これ、一体どうなってるんだい?」

そこはもう夜でした。
見たこともない紫の夜空に、銀色の月が浮かんでいます。
オレンジと黄色の星が瞬いています。
とんがった屋根とねじれた木々の影が並んでいます。

「ようこそ!チャック!」

そう言うと、ジャックは恭しく礼をしました。

「さあ!行こう!ぐずぐずしてたら遅れちまう!」

ジャックはチャックの手をつかむと勢いよく飛び上がりました。
するとどうでしょう。
チャックの体はふわりと紫色の空に浮かびあがったのです。


つづく
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