2015年10月30日

妖精チャックとお化けカボチャ 5

それはチャックが初めて見る色の空でした。
夜明け鳥のグーグーとズーズーにつかまって飛んだ真っ青な空とも、こどもくじらの背中にのって夜明けの海から飛び出した時とも、星の舟に乗って夜空を渡った時とも違う空の色でした。
妖しくて、でも柔らかな深い紫のビロードが、空一面に張り巡らされているようでした。
そんな不思議な夜の天幕に、水銀を張ったような銀色の月が濡れたような輝きを湛えて浮かんでいます。
とても美しい夜でした。

「すごいすごい!」

ジャックが手を離しても、チャックの体はふわふわと空を浮かんでいます。
チャックはくるくると紫の空を飛びまわります。ジャックがその横を飛びながら「うまいじゃないか、チャック!」と拍手してくれます。
高く、低く、ジャックとチャックは空を飛んでいきます。
ジャックは一軒のとんがり屋根の家の窓に近づくと、チャックを手招きしました。

「なんだい、ジャック?」
「しーっ」

ジャックはいたずらっぽく微笑みながら、窓をコンコンっとノックしました。「はい?」と声が聞こえて、窓が開きます。するとジャックは、窓の中に向かって顔を突っ込んで「うわっ!」っと大きな声をだすのです。窓の中からキャーッと大きな悲鳴が響きます。もちろんチャックも驚いてしまいました。
ジャックはケタケタと笑いながらまた夜空に飛び上がります。
チャックは慌ててジャックを追いかけます。

「ジャック!何て事するんだ!」

けれどジャックはケタケタ笑いながら言うのです。「何言ってるんだ、チャック!さあ、パーティの始まりだぜ!」その悲鳴が合図だったでしょうか。あちこちでびっくりさせようとする掛け声と、悲鳴と、そしてその後に楽しそうな笑い声が聞こえてきたのです。

「どういうこと?」

チャックにはわけがわかりません。
そうしていると、今度は大きな黒い犬の頭を持った影が、チャックの後ろで大きく吠えました。

「うわあっ!」

びっくりするチャックを見て、ジャックもその影もケタケタと笑います。

「何だよ、突然。びっくりするじゃないか!」
「チャック、怒っちゃダメだ。今日はそういうお祭りなんだ。これはそういうパーティなんだぜ」
「え?」
「今日は一年に一度だけ、お化けたちのパーティなんだ。驚かしたり、驚かされたりして楽しむ日なんだ」

そう言われて、チャックがようく見てみると、驚ろいた後に、みんな笑っています。驚かした人もまた、今度は誰かに驚かされるのです。段々チャックは分かってきました。そしてワクワクしてきました。

「チャック、手をだしな」とジャック。「こいつをやろう!」そういいながらジャックはチャックの手に山盛りのキャンディを乗せました。

「さあ、夜は短いぞ。どっちが沢山驚かしたり驚かされたりできるか競争だ!」
「うん!」

チャックとジャックはそれぞれ紫の夜に飛び立ちました。




つづく。
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